『へんな星たち ― 天体物理学が挑んだ 10 の恒星』を読んだ
『へんな星たち ― 天体物理学が挑んだ 10 の恒星』を読みました。
ウォルフ・ライエ星について調べていたところ、この本で紹介されていることを知ってすぐに買いました。ウォルフ・ライエ星が重力崩壊型超新星爆発の前駆天体であることは知っていましたが、それの進化段階(元素構成)によって超新星爆発の種類が変わるということは知りませんでした。またロングガンマ線バーストの原因だろうと考えられていることも知り、自分の持つ点々とした知識が線で結びついていって面白かったです。
またその他の恒星、特に Be 型星、Ap 型星、炭素星の特徴やその特徴が現れる仕組みが分かって勉強になりました。こういう星の分類があることは知っていたんですが、その実例について知らなくて今までモヤモヤっとした理解をしていました。本書では各分類のプロトタイプとなる星について、その機構はもちろんのこと、おもしろエピソードや研究史なども紹介していて、星についての理解の解像度がグッと上がりました。
へんな特徴を持つ星が見つかるたびにその特徴を表す新たな分類名が決められてきました。まるで系統がまったく異なる星がたくさんあるように見え、すごく覚えにくいと思っていたんですが、実際には星の進化段階(年齢)であったり質量や伴星の有無によって見え方が変わっているだけで、基本的にはどの星も HR 図上で同じように進化していくというのはとても面白いですね。前に活動銀河核統一モデル(セイファート銀河やブレーザーのように活動銀河核の種類は色々あるが、実際は地球に対する角度の違いで同じものが違ったように見えているとするモデル)についての記事を読んだんですが、それに似ていると思いました。俯瞰的な地図の上に個々の事例をマッピングできるようになると、知識の連結が強固になって理解が一気に進んでいいですね。自分は巨星分枝や水平分枝といった巨星の進化経路について理解が浅く、それについて一気通貫に説明できないことに気づいたので、次はこの辺を整理して人に説明できるようにしていきたいです。頭の中で HR 図を思い浮かべて「この星は HR 図上のこの段階だからこういう特徴を表しているんだな」ってことがサッと思い浮かべられるといいな。
目次
- 第1章 プレオネ イナバウアーする二重円盤
- 第2章 プシビルスキ星 宇宙人が核兵器を捨てたのか?
- 第3章 ミラ サプライズだらけの彗星もどき
- 第4章 かんむり座 R 星 初心者におすすめの宇宙ダコ
- 第5章 いっかくじゅう座 V838 星 すべてが規格外の美しき怪物
- 第6章 りゅうこつ座イータ星 「天の川 No. 1」を誇ったあの星はいま
- 第7章 WR 104 本当は危険な宇宙の蚊取り線香
- 第8章 おうし座 V773 星 世界が追いかけた恋人たちの熱いキス
- 第9章 ケフェウス座 VW 星 ひょうたんは究極の愛のかたち
- 第10章 ぎょしゃ座イプシロン星 世界中で大激論!幽霊の正体を明かせ!