『宇宙を支配する「定数」 ― 万有引力から光速、プランク定数まで』を読みました。この世界を規定している物理定数について紹介した本です。各種物理定数の意味や測定精度を上げるための工夫、また物理定数が支える単位系について分かりやすく解説しています。

表紙

重さや長さ、時間の単位は人間が恣意的に決めたもので、その基準は原器や地球の運動を元に定義されていました。しかし原器や地球は時間の流れとともに変わっていってしまうため、不変な単位の基準として使うには適していませんでした。そこでそれらを光速のような自然界の定数によって再定義することで、不変で普遍な基準として利用することができるようになりました。物理定数を単位の基準に使うにはその物理定数を精度良く計測する必要があります。研究者は測定環境を改善したり原子時計のような超高精度な測定機器を開発することでこの要求を見事実現してきました。

個々の物理定数の意味や単位の定義方法についてはある程度知っていましたが、物理定数や単位間には関係性があってそれらがフローチャートのように順番に決まっていくというのは本書を読むまで気にしたことがありませんでした。また測定精度についても知らないことが多くあり、例えば万有引力定数の有効数字が少ない理由は全く知りませんでした。重力は他の力に比べて微弱でかつ遮蔽などができないため実験での取り扱いが難しく、また重力は理論統合されていないため、他の定数の測定精度の向上が万有引力定数の精度向上に直接寄与しないそうです。なるほどなぁ。

もともと本書を読み始めた理由はプランク定数について知りたかったからなんですが、それ以外の物理定数や単位の定義方法についても色々学べて面白かったです。

目次

  • 第1部 物理定数とは何か ― 原子に刻まれたものさし
    • 第1章 物理定数とは何か ― 根源的な法則に現れる「固有の値」
    • 第2章 物質と定数 ― 光が解き明かす極微の世界
  • 第2部 「時空」を支配する定数 ― 時間、光速、万有引力
    • 第3章 時間を刻む「原子の振り子」 ― 「時間を測る」とはどういうことか
    • 第4章 光速「c」 ― 不変にして宇宙の「上限速度」
    • 第5章 万有引力定数「G」 ― 万物をつなぎとめる「糸」
  • 第3部 「ミクロの世界」を支配する定数 ― 電気素量、プランク定数、ボルツマン定数
    • 第6章 電気素量「e」 ― 電気と力のキャッチボール
    • 第7章 プランク定数「h」 ― 量子力学の代名詞
    • 第8章 ボルツマン定数「k」 ― 熱とエネルギーの変換係数
  • 第4部 宇宙の進化と物理定数 ― 果たして「一定不変」か?
    • 第9章 物理定数を「決定する」とはどういうことか
    • 第10章 物理定数は「不変」か
    • 第11章 定義値の「その先」へ