『女性と天文学』を読んだ
『女性と天文学』を読みました。天文学における有名な発見や法則はその多くが男性天文学者に帰属していますが、その裏には密かにしかし重要な活躍をしてきた女性研究者たちがいます。本書はそんな彼女たちにスポットライトを当てています。
女性は社会的、金銭的な理由から研究の道を志すことが難しかった。運良く身内や周囲のサポートを得られたとしても、与えられた仕事は男性がやりたがらないような面倒な作業(計算や観測データの整理)だったり、観測装置も自由に使うことはできなかった。また重大な発見をしても発見者としての栄誉を享受することが難しかった。そんな彼女たちが困難の中で自身の研究を結実させ、そして天文学分野における女性進出に心血を注いできた様子が、本書では詳細に語られています。彼女たちの活動に敬意を評するとともに、女性の進出はいまだ未解決の問題であることを改めて考えさせられました。
(日本の研究者を紹介した特別章を除き)本書で紹介されている女性研究者たちを私は一人も知りませんでしたが、彼女たちの発見や貢献したものはどれも知っているものばかりでした。今まで単なる知識の断片として認識していた事柄が、それに関わった女性研究者のストーリーや研究の歴史を学ぶことによって、うまく繋がり合って色彩を帯びたように感じます。特に、天体カタログ作成、星のスペクトル型分類、周期光度関係の発見、銀河回転の問題、パルサーの発見の話が印象に残りました(ほとんどすべてかも・・・?)
本書は研究者の伝記や天文学史にとどまらず、発見に関連した理論の解説も散りばめられていて、そちらもとても勉強になりました。項目によっては今まで自分が読んできた専門書よりも簡潔で分かりやすくまとめられていたかもしれません。
目次
- 第1章 天の半分
- 第2章 彗星 ― 二人のキャロラインの献身
- 第3章 星の分類 ― アニーとその仲間たちの忍耐の賜物
- 第4章 脈動する星々 ― ヘンリエッタの革命
- 第5章 星の工場 ― マーガレットの戦い
- 第6章 暗黒物質 ― ベラが抱いた疑問
- 第7章 宇宙空間に浮かぶ灯台 ― ジョスリンの信じがたい発見
- 特別賞 日本の女性と天文学