『連星からみた宇宙 ― 超新星からブラックホール、重力波まで』の読書メモです。

表紙

読んだきっかけ・感想

  • 確か日経サイエンスのブックガイドで紹介されていて本書の存在を知ったのだけど、近所の本屋のブルーバックスコーナーでも平積みされていてずっと読みたいと思ってました。
  • 宇宙の成り立ちを調べる上で連星が果たした役割や、その多様で興味深い姿が分かりやすく詳しく紹介されていて面白かったです。
  • 以前読んだ『極・宇宙を解く ― 現代天文学演習』の良い復習になりました。

読書メモ

第1章 あれも連星、これも連星

  • 色々な連星系の軌道パターンが紹介されていて面白かった。連星は 2 つの恒星が回る二重連星が基本ユニットで、その二重連星から少し離れた位置で別の二重連星や単独星が回り、さらにそれから少し離れた位置を二重連星や単独星が回り・・・、という階層構造になっているらしく、重力の関係で 3 つ以上の星が近くを回るような連星系軌道は不安定で維持できないらしい。そういう複雑なパターンも安定してあると思ってました。
  • 階層構造はモビール図で表すことができる。

第2章 連星はどのようにしてできたのか

  • 星の形成過程、連星のできかた(原始惑星系円盤の分裂・分子雲コアの分裂・捕獲)、星団、連星の変化(逃亡星・サバイバル連星)など。

第3章 なぜ連星だとわかるのか

  • 連星発見の歴史、実視連星・食連星・分光連星、食による連星の発見など。

第4章 連星が教える「星のプロフィール」

  • 連星を使った星の質量計算の話。ケプラーの第三法則・分光連星による視線速度の計算・食連星の光度曲線による軌道傾斜角の計算などを駆使して質量計算に必要なパラメータ(公転速度や星間距離など)を集めて質量を計算する。質量光度関係、質量と星の寿命、など。

第5章 「新しい星」は連星が生む幻か

  • 主系列星の進化(赤色巨星・白色矮星)、巨星と白色矮星がなす連星の質量移動による新星、連星の合体によると考えられる赤い新星、など。
  • 連星の合体によってより重い主系列星のように振る舞い始めることで、同じような歴史を持つはずの星団の中で特異なものとして観測されるというのはなるほどと思った。

第6章 ブラックホールは連星が「発見」した

  • X 線源の発見、中性子星とブラックホールのできかた、中性子星と準巨星による連星、ブラックホールと超巨星による連星。
  • 質量の大きな天体ほど降着円盤における摩擦熱が大きくなり、X 線バーストが生じる。
  • 白色矮星と巨星の場合も含めて、連星の組み合わせごとの光り方をちゃんと整理したいと思いました。

第7章 連星が暗示する「謎のエネルギー」

  • Ia 型超新星爆発、宇宙の誕生と宇宙膨張。
  • Ia 型超新星爆発の原因だけど、降着説と衝突説の二つがあるのか。降着説で結論が出ていると思ってた。衝突説だとチャンドラセカール質量に制限された超新星爆発にならないから宇宙の距離梯子として使えなさそうだけど、両者の区別はできるのかな?

第8章 連星が解いた「天才科学者最後の宿題」

  • 中性子連星の公転周期の変動による重力波の間接的な検出、中性子星・ブラックホール連星の衝突による重力波の直接検出、重力波の検出器、ガンマ線バースト、キロノバ、など。

第9章 連星のユニークな素顔

  • 過剰接触連星、共通外層天体、近接連星における激しい活動(巨大なプロミネンスやスーパーフレア)など。
  • 低温度星では荷電粒子の対流によって磁場が生じるが、それによって逆に対流が抑制されてエネルギー伝播を阻害しさらに低温の部分ができる。これが黒点として観測される。低温度星の連星は単独星のときよりも自転速度が速くなるため、荷電粒子の対流が速くなって磁場が強くなり、前述の激しい活動を引き起こす。

第10章 連星も惑星を持つのか

  • 連星をまわる惑星(P タイプと S タイプ)、原始惑星系円盤と惑星の進化、自由浮遊惑星、ハビタブル惑星、など。
  • 系外惑星が見つかるのって母星があるからこそな気がする(例えばトランジット法)けど、自由浮遊惑星はどうやって見つけたんだろう?
  • トラピスト1のような低温度星を周る惑星の場合、その分母星に近づけば地球のような環境に近づくと思ってたけど、前章にあるように低温度星は磁場の活動が強くなるので話はそんなに単純じゃないらしい。なるほど。

第11章 連星は元素の合成工場だった

  • 元素合成プロセスの話。
  • ソーン・ジトコフ天体というものが提唱されていることを知らなかった。赤色(超)巨星の中に中性子星があるものらしい。ブラックホールが中にあるものは quasi-star と呼ばれる。

第12章 もしも連星がなかったら

  • もしも連星がなかった場合に人類史や宇宙観測に起こったかもしれないことについて。