演習|極・宇宙を解く ― 現代天文学演習
『極・宇宙を解く ― 現代天文学演習』を一通り読み解いたときのメモです。本書は『超・宇宙を解く ― 現代天文学演習』の改訂版として 2020 年 2 月に出版されました。天文宇宙検定 1 級の公式参考書に指定されており、その受験に向けて読みました。
今回の版から問題の詳解が公式ページで公開されるようになりました。素晴らしい!
まえがき
読書メモは旧版との差分を中心に書いており、内容をまとめたものではないです。旧版のときのメモは以下の Tweet スレッドで見れます。
『超・宇宙を解く ― 現代天文学演習』の二周目を読み始めた #nhbk https://t.co/QNhU63GFsp
— nhiroki (@nhiroki_) June 22, 2019
読書メモ
第 1 章 現代天文学の基礎概念
第 1 節 宇宙のスケール
- 旧版からの差分はほぼなくて、図 1.1 として種々の天体における典型的な個数密度と温度の図が増えたぐらい。
- 詳解に書かれた “プランクスケールで時空はデジタル化されているといってもいいだろう” という一文がなんかかっこいい ((PDF) 1 宇宙のスケール 詳解)。
第 2 節 重力と重力エネルギー
- 旧版から少し問題が増えた。内容は変わりなし。
第 3 節 宇宙気体とその性質
- 旧版から地球大気・太陽大気・太陽コロナの平均分子量を求める問題がなくなり、最後の物体の内部エネルギーに関する話題が問題から演習に変更された。
第 4 節 音波と衝撃波
- 問題・演習構成が若干変わったくらいで、旧版からの差分はほぼない。
第 5 節 天体の磁場とその性質
- 旧版からの差分は最後の「研究」の項の内容が磁場分布の作図から荷電粒子の運動の作図に変わったぐらいで後は一緒っぽい。
第 6 節 電磁波スペクトル
- 旧版からの差分はなし。
第 7 節 輻射場の基礎
- 旧版を読んだときは数式を飛ばし読みしたけど、今回は式展開を丁寧に追いつつ読んだ。
- 新版では注釈で天文学における放射 (emission) と輻射 (radiation) の使い分けが新たに説明されていたのがとても良かった。
第 8 節 黒体輻射のスペクトル
- 旧版との差分は、使用している記号の変更 (8.15 式) や補足的な数値 (研究 1 (2)) が足されてるぐらいでほぼなさそう。
第 9 節 原子スペクトル
- 旧版からの差分はない。
第 10 節 ドップラー効果と赤方偏移
- 旧版からの差分はなし。
第 2 章 太陽系と太陽
第 11 節 惑星の運動:ケプラーの法則
- 旧版との差分はなさそう。
第 12 節 惑星の大気構造
- 旧版との差分は、惑星・準惑星・衛星の大気鉛直構造を比較したグラフ (図 12.1) と成層圏での温度上昇に関する問題が増えて、圧力差に関する演習がなくなった。図 12.1 は天文宇宙検定に出題されそうな気がする。
- 問 12.6 のスケールハイトを求める問題、12.4 式に値を代入するだけと思いきや計算が合わない。残念ながら本節はまだ詳解がアップされてないから確認ができない。早くアップされるといいな。
第 13 節 太陽スペクトル
- 旧版では演習 1 (6) で太陽定数を求めさせているが、新版では太陽定数を与えた上で地球軌道の半径の球面を通過する総輻射量を計算する問題に変わっている。
- 太陽のプロミネンス、画像で見ると迫力あってめちゃくちゃ熱そうだし実際 10000 K くらいあるガスなんだけど、突出先の大気 (コロナ) は 1000000 K もあるので相対的には極低温というのは面白い。
- 太陽といえば NASA ゴダード宇宙飛行センターの公開している太陽フレアの動画が素晴らしいので是非観て欲しい。吹き上がったガスがアーチを描いて流れ落ちてくる様子が美しい。幻想的な BGM と合わさってずっと観続けてしまう。
- あとハワイにある Daniel K. Inouye 太陽望遠鏡が撮影した太陽表面の粒状斑の動画も素晴らしい。ガスの浮き上がっている部分が明るく、沈み込んでいる部分が暗くなっていて、複雑なパターンを構成してる。まるで細胞みたい。
第 14 節 太陽面現象と周縁減光効果
- 旧版との内容の差分はなさそう。周縁減光効果を説明する図 14.4 が旧版より詳細になって分かりやすくなった。
- 第 13 節で紹介した太陽表面での粒状斑の対流がコロナの加熱源だと考えられているらしい。粒状斑のある光球内部からコロナまでは距離があるので、その間のエネルギー伝播はいくつか説がある。
第 15 節 太陽コロナの構造と加熱源
- 旧版では「太陽コロナの構造と輝度分布」という名前だった。演習の内容が大きく変わっていて、旧版では K コロナの輝度分布を求める内容だったが、新版ではコロナの加熱機構を紹介・計算する内容になっている。
第 16 節 太陽風とパーカーモデル
- 旧版との差分は編集上の変更 (言葉遣いの変更など) を除けばほぼなさそう。旧版では遷音速流の解を「ボンジ解」と表記してたけど新版では「ボンディ解」という表記に変更されてた。
- 本節の内容は特に難しくて今の自分では太刀打ちできない・・・。
第 17 節 太陽エネルギーの発生と輸送
- 前半は太陽が「石油の燃焼」「重力エネルギーの解放」「核融合反応」それぞれで輝いているとした場合のエネルギー効率と寿命の計算、後半は太陽の内部構造 (放射層と対流層) をエネルギーが伝わるのにかかる時間を計算した。
- 旧版では本節は「太陽のエネルギー源」となっている。前半のエネルギーと寿命の計算は一緒だけど、後半が全然違っていて、旧版では各種特性時間を求めさせる問題になっている。
これを実際に計算したことになる。ちなみに仮に石油が燃えているとすると 7000 年くらいしかもたないのに対し、核融合反応だと 100 億年ぐらいもつ https://t.co/iYogogGCYk #nhbk
— nhiroki (@nhiroki_) August 22, 2020
- 太陽は内側から中心核・放射層・対流層で構成されていて、本書の計算に従うと放射層をエネルギーが伝わるには 1000 万年くらい、対流層では 24 日くらいと計算される。粒状斑は対流層の表面にあるので、これを揺り動かすエネルギーは 1000 万年を経て表出してきている。
第 3 章 恒星の世界
第 18 節 星の明るさと色
- 旧版からの差分は図 18.1 の UBV フィルタのグラフに RI フィルタが加えられたのと、輻射等級と輻射補正の説明が 1/4 ページくらい増えて、輻射補正の概念図を示した図 18.2 が増えた感じみたい。
- 等級の計算は自信がないので後でもう一回問題を解く。
第 19 節 恒星の距離を推定する
- 旧版との差分は年周視差によって測定可能な距離についての記述が更新された。旧版ではヒッパルコス衛星のデータを使って 1 kpc 程度とされていたが、2013 年に打ち上げられたガイア衛星の年周視差データを使うと最大 50 kpc の距離決定が可能になり、銀河系内のほぼ全域の恒星までの距離を測定できるようになるらしい。すごい精度の向上だ。
第 20 節 星のスペクトル分類
- 旧版からの差分はなさそう。
第 21 節 スペクトル線の形成
- 旧版からの差分は、ボルツマン式とサハ式の名前の由来に関する注釈の追加と、サハ式の本質がボルツマン式の本質と同じであることを明示する一文が加わったところみたい。後者の一文が追加されたことで個人的にはだいぶ分かりやすくなった。
第 22 節 恒星の HR 図
- 旧版との差分は、新しく星の光度階級に関する記述が増えた。一方、主系列星・赤色巨星・白色矮星・褐色矮星のエネルギー機構に関する記述がごっそりなくなった。多分後の章でそれぞれの解説が入るからここからは消したのかな?
第 23 節 星団の色-等級図
- 旧版との差分はなさそう。
第 24 節 恒星の内部をさぐる
- 本節は今の自分にはかなり難しく、真面目に読もうとするとかなり時間がかかりそうなので流し読み。
- 旧版との差分は問題が一部改変されてるぐらいでほぼ同じ。
第 25 節 星の進化
- 旧版では重力崩壊型超新星爆発の爆発機構が解説されていたが、新版ではこれがなくなった。新版では超新星に関する節 (第 26 節) が新たに追加されており、どうやらそちらに内容が移動して加筆されているみたい。
- 恒星はその質量に応じて進化の過程が変わり、質量が大きくなるほど早く燃え尽きて寿命が短くなる。太陽質量の場合は水素燃焼が進んでヘリウムコアができてくると膨張を始めて赤色巨星となり、さらに燃焼が進むと収縮に転じて白色矮星となる。寿命は大体 100 億年。一方、質量が太陽の半分よりも少ない星はヘリウムコアができると燃焼が進まなくなり、赤色巨星にならずに白色矮星となる。ただし、このタイプの星の寿命は 700 億年以上あると推定されており、宇宙の年齢 138 億年よりも断然長いため、この質量の星はまだ白色矮星になっていないと考えられている。
- 現在の宇宙年齢のさらに数倍の年月をかけて進化する星があるなんて、なんだか名状し難い気分になるな。
第 26 節 超新星とガンマ線バースト
- 新版で新しく追加された節。超新星爆発の観測史、符号方法、爆発の分類 (Ia, Ib, Ic, IIL, IIP)、ガンマ線バースト (GRB) の発生源、など。2 秒以下の short GRB は重力波源 GW170817 の観測で中性子星同士の合体によると確かめられたらしい。
第 27 節 主系列星の質量光度関係
- 旧版からの差分はほぼなさそう。
第 28 節 セファイドの周期光度関係
- 旧版から文面や内容の一部変更はあるけど、全体の流れは変わってない。
- 本節は演習がメインなので、演習をすっ飛ばしがちな自分にとってはちょっと内容を把握しにくい。時間が潤沢にあれば演習もやりたいんだけど・・・。
第 4 章 連星とブラックホール活動
第 29 節 連星の質量を求める
- 旧版からの差分はなさそう。
第 30 節 コンパクト星の潮汐力
- 旧版からは問題セットが少し変わってるだけで、本文には差分はなさそう。各コンパクト天体における重力加速度の計算に手間取って時間がかかった。
第 31 節 ロッシュポテンシャル
- 旧版からの差分は、新たに近接連星の分類 (分離型・半分離型・接触型) についての記述が増えた。これのおかげで分類ごとのロッシュポテンシャルを表した図 31.3 の意味が旧版よりも分かりやすくなった (網掛け部分の意味が分かってなかった)。
第 32 節 降着円盤とは
- 旧版からの差分はなし。問 32.1 のロッシュローブの大きさの求め方が分からない。問 32.3 は白色矮星が地球サイズだと仮定して円盤温度を計算したら解答に近い値になった。
第 33 節 激変星の光度曲線とスペクトル
- 旧版では「激変星の光度曲線」と「激変星の輝線スペクトル」の 2 節に別れていたものが、新版では 1 節にまとめられている。
- 内容にそこまで大きな違いはないけど、説明の加筆や使用されている光度曲線の図が変更されてたりする。あと矮新星のスーパーハンプに関する演習がなくなり、新星の減光速度と超軟 X 線源の双極ジェットに関する演習が本文中に組み込まれた。
第 34 節 ブラックホール連星 Cyg X-1
- 旧版との差分は問 34.1 の次元解析の問題が増えただけであとは全部一緒みたい。
第 35 節 宇宙ジェット SS 433 の謎
- 旧版からの差分はなし。
第 5 章 天の川銀河と星間物質
第 36 節 恒星の運動
- 旧版では太陽運動が研究の項で紹介されていたが、新版では本文に組み込まれた。それに伴い演習の構成が少し変わった。
第 37 節 運動星団
- 本節は新板で新しく追加された。おうし座のヒアデス星団を例に星団やアソシエーションの固有運動についての解説。
- 固有運動が一点に収束もしくは一点から発散するような星団を運動星団と呼ぶ。実際に収束・発散しているわけではなく、太陽に対して遠ざかる・近づく動きがそのように見える。これを使って星団までの距離と運動速度を求めることができるらしい。
第 38 節 天の川銀河の構造と星団の分布
- 旧版では「銀河系の構造と星団の分布」というタイトルだった。旧版からの差分はほぼない。その存在が予測されているがまだ見つかっていない種族 III の星に関する記述が追加された。
第 39 節 天の川銀河の姿と赤外線観測
- 本節は新版で新しく追加された。天の川銀河を様々な波長で見たときの比較、赤外線天文学の基礎、星間塵による減光、赤外線波長域におけるスペクトル線のピーク、赤外線による低温度天体の観測、など。
- 赤外線は可視光に比べて減光の影響を受けにくいので、原始惑星系や活動銀河核といった星間塵に覆われた領域の観測に適している。どの波長を使ってどのスペクトルを観測するかは、ウィーンの変位則を使って求めることができる。
第 40 節 電波で観た星間物質
- 前節に続き本節も新版で追加された。オリオン座を可視光・電波 (CO) で観たときの比較、物質を伝わる放射の性質、HII 領域における熱制動放射スペクトル、など。本節はなんかあまり頭に入ってこなかったので後でまた読み直す・・・。
第 41 節 星の形成
- 本節は旧版からいくつかの部分が削られている。具体的には恒星や惑星の誕生の簡略化した流れの説明とジーンズ波長の厳密な解析を行う研究の項がなくなった。前者は多分別の節で詳しく述べるので省かれていて、後者は詳細過ぎるから削ったのかな?
- 前者は第 42 節に移動してた。
第 42 節 原始星から主系列星へ
- 旧版と話の流れは同じだけど細かい部分が結構変わった。例えば、星間物質の温度・数密度図が消えた。前主系列星について T タウリ型星の他にハービッグ Ae/Be 型星の説明が増えた。HR 図における星の誕生経路 (林トラック) の説明も増えた。
- 前主系列星において、低質量星は T タウリ型星、中質量星はハービッグ Ae/Be 型星になる。ハービッグ・ハロー天体と勘違いしていたけど、こっちは星形成領域周辺で見つかる星雲状の天体で、星形成時に発生する宇宙ジェットが周囲のガスと衝突して発光しているものらしい。
- Ae 型星や Be 型星の意味。A や B が星のスペクトル型。e は emission line のことで水素輝線を持つ星のことらしい。
- 南天の星座の一つである「ほ座」って「帆座」なのか。「ほ」が何を意味するのか毎度気になってたけど今まで調べてなかった。超新星残骸で有名。
第 43 節 超新星残骸
- 旧版では「超新星爆発のなごり」という名前だった。新版では超新星爆発の仕組みや分類は第 26 節で既に説明しているのでカットされた。あとは差分はなさそう。
第 44 節 宇宙線とは
- 本節は新版で追加された。宇宙線のエネルギースペクトルやその起源に関する解説。1 次宇宙線は銀河宇宙線・銀河系外宇宙線・太陽宇宙線に大別される。それぞれとり得るエネルギー帯が異なる。銀河宇宙線の起源は超新星残骸における衝撃波加速が有力。
- 宇宙線は荷電粒子なので星間磁場で曲がるため発生源を直接特定するのは難しい。超高エネルギー宇宙線は宇宙背景放射と相互作用してエネルギーを失うため、およそ 50 Mpc 以内で発生する必要がある (GZK カットオフ)。こんな感じでちょっとずつ条件を付けて観測範囲を絞っていく感じが面白い。
- 超高エネルギーニュートリノ観測の試みとしてアイスキューブ実験について軽く触れられている。アイスキューブ実験については『深宇宙ニュートリノの発見』という本を最近読んだ。観測に至る紆余曲折が描かれていてとても面白い本だった。
第 45 節 オールト定数と銀河回転
- 旧版からは演習が若干変わっただけで差分はほぼない。
第 46 節 天の川銀河の回転曲線
- 旧版では「銀河系の回転曲線とガスの分布」だった。小節の構成が若干違うけど、内容は一緒。
- erg というエネルギー単位がしばしば出てくるんだけど、使い慣れてないせいでいまいちピンとこない。
第 47 節 X 線で観た天の川銀河の中心
- 本節は新版で新しく追加。銀河系の中心にある Sgr A* の活動状況について。
- Sgr A* は X 線光度が他の活動銀河核に比べて暗く、以前はもっと明るかったと推定されている。周辺にある X 線反射星雲は Sgr A* から放たれた X 線によって輝いており、地球とそれらの位置関係 (光路差) を考慮すると Sgr A* の過去の活動状況を知ることができる。
- 銀河面の垂直方向にはフェルミバブルと呼ばれるガンマ線の強い構造があるらしく、これも銀河系が活動的だった頃の名残りだと考えられている。
第 48 節 天の川銀河の中心を探る
- 旧版では「銀河系の中心を探る」というタイトルだった。旧版と比べて中心核の構造の説明が詳しくなり、問題も少し変わった。
- 銀河系の中心には円盤状の星の構造があり、これを中心核バルジもしくは中心核円盤と呼ぶ。中心核バルジは一般的に考えられているバルジとは異なる構造らしい (どう違う??)。その中には中心核星団と呼ばれる星団があり、同様な星団は系外銀河でも見つかっているらしい。
旧版にあった "現在見つかっている中で,もっとも中心まで接近する恒星は S2 と呼ばれるものである" という記述がなくなった https://t.co/sAIG7arqSI #nhbk
— nhiroki (@nhiroki_) October 25, 2020
第 6 章 銀河と宇宙
第 49 節 銀河の分類
- 旧版からの内容的な差分はなさそう。
第 50 節 銀河回転とダークマター
- 本節も旧版からの差分はなさそう。
第 51 節 活動する銀河
- 旧版からの差分はなさそう。
第 52 節 X 線で観た活動銀河核
- 本節は新版で新たに追加された。X 線強度の時間変動とその放射領域サイズの関係、活動銀河核の構造と各エネルギー帯における X 線スペクトルの放射メカニズム、など。
第 53 節 電波で観た活動銀河核
- 本節は新版で新たに追加された。望遠鏡の空間分解能の計算、電波干渉計の仕組み、クェーサーからの電波放射とジェットの相対論的ビーミング効果、ブラックホールシャドウ、など。
- 本節はとても楽しかった。すばる望遠鏡や EHT (Event Horizon Telescope) といった望遠鏡の空間分解能やブラックホールシャドウの大きさを自分で計算できるようになって嬉しい。
第 54 節 宇宙ジェットと超光速運動
- 旧版からの差分はなさそう。
第 55 節 超大質量ブラックホールの質量
- 本節は旧版にもあったが内容がだいぶ変わった。旧版では超大質量ブラックホールとバルジの共進化や水メーザーによるブラックホールの観測についての話だったのに対し、新版では広輝線領域の反響マッピング法によるブラックホールの質量推定の話に変わった。
第 56 節 銀河団と大規模構造
- 旧版ではビリアル定理の導出が載っていたが、新版ではそれがなくなって銀河団の X 線スペクトル・元素組成比・銀河団の質量推定といった話題に差し替えられた。
- ペルセウス座銀河団中心部を X 線で観測した結果分かった元素組成比は太陽系のそれと同じで、このことから太陽系の化学組成が一般的なものであることが分かる。
- 問 56.1 から問 56.3 まで略解すらもない。せめて略解だけは載せておいて欲しかった。
第 57 節 重力レンズ
- 旧版からの差分はあまりなくて、ブラックホール周辺の降着円盤の見え方の図 (インターステラーみたいなやつ) が追加されたのと、「重力レンズでなぜ曲がるのか」が演習問題になった (元は本文だった)。
- 重力マイクロレンズ法による見え方はこの動画が分かりやすい。
第 58 節 重力波事象 GW150914
- 本節は新版で新たに追加。重力波事象 GW150914 とそれを検出したレーザー干渉型重力波天文台 LIGO の構造、ブラックホールの合体シーケンス (インスパイラル・マージャー・リングダウン)、など。演習は GW150914 の波形解析。
第 59 節 ハッブル=ルメートルの法則
- 旧版から内容の差分はないが、タイトルが「ハッブルの法則」から変更された。脚注によると、2018 年から「ハッブル=ルメートルの法則」と呼ぶことが推奨されているらしい。
第 60 節 宇宙背景輻射
- 旧版からの差分はほぼなく、光円錐に関する問題がなくなった代わりに近年の宇宙背景輻射の観測に関する記述が増えたくらい。
第 61 節 宇宙膨張とダークエネルギー
- 宇宙項に関する記述が若干増えただけで、あとは旧版からの差分はなし。
第 62 節 系外惑星の観測と特徴
- 旧版から「研究」の内容が変わったり、用語の表記が整理されたり、系外惑星の発見数が新しくなってたりするが、全体的な内容には変更はないみたい。
- 図 62.2 の右側は主星質量と惑星質量の関係についてのグラフだが、説明文では軌道長半径と離心率に関するものになっている。これは旧版では軌道長半径と離心率のグラフだったからで、改訂に当たって図を間違えたか説明を書き換えるのを忘れているっぽい。
第 63 節 宇宙船から観た星景色
- 旧版からの差分はなさそう。