『宇宙岩石入門 ― 起源・観測・サンプルリターン』の読書メモです。日経サイエンス 2020 年 11 月号の新刊 Guide で紹介されているのを見て買いました。来月受験する天文宇宙検定に対する備えと、以前『見えない絶景 ― 深海底巨大地形』を読んで地球を構成する岩石やその起源である太陽系の成り立ちについて興味が湧いたことが読み始めた理由です。

表紙

読書メモ

Twitter でのメモ書き

Part 1 宇宙の岩石の起源 ― 太陽系創造と岩石型惑星

第 1 章 宇宙の歴史 ― ビッグバンから太陽系創造まで

  • インフレーションとビッグバン、ドップラー効果と赤方偏移による速度推定、恒星進化と元素生成 (pp チェイン、CNO サイクル、炭素・酸素・ケイ素燃焼過程、s 過程、r 過程)、オニオンシェル構造、太陽系生成モデル、など。太陽系生成モデルの話は、原始惑星系円盤の形成から主系列星になるまで、巨大ガス惑星と小惑星の形成 (ニースモデル、グランドタックモデル)、ホットジュピター問題、など。
  • 小惑星帯が現在の位置にあり、太陽系にホットジュピターが存在せず、後期重爆撃で大量の隕石が降り注いだのは木星や土星の移動によって一掃されたからと考えられているのか。図 1.8 のニースモデルとグランドタックモデルの融合モデルの図が分かりやすい。
  • 自分が太陽系形成モデルを全然理解していなかったことが分かった。時間をかけてじっくり理解したいな。

第 2 章 太陽系の岩石惑星 ― 太陽と地球型惑星

  • 太陽・水星・金星の今までの探査機観測の歴史と各惑星のデータや特徴など。隕石かどうかの判定は、隕石の難揮発性元素の元素存在度を太陽のそれと比べることで簡単に分かるらしい。
  • ベピ・コロンボに限らず日本が絡んでる探査計画はあんまり知られてなさそう。自分は JAXA のツイッターアカウントもしくは天文系のニュースページで知った。

“ベピ・コロンボについて知っている人は日本では専門家以外にはほとんどいないのではないでしょうか” ― p.30

  • 硫化物に入りやすい元素を「親銅元素」と呼ぶのか。親硫元素じゃないのね (p.55)

第 3 章 月 ― 月の成因と岩石学

  • ジャイアントインパクトによる月の形成、レイトベニアによる地球マントルへのコンドライトの追加、月の岩石年代、など。
  • レイトベニア知らなかった。強親鉄元素が地球マントルに過剰にある理由を説明する仮説らしい。月の岩石年代の話は岩石学に関する基礎知識がないせいで目が滑る・・・。
  • 地球と月の形成史を描いた図 3.1 が分かりやすい。

第 4 章 火星 ― 最も生命の可能性が高い惑星

  • 火星探査機の歴史、火星の特徴、火星の衛星に関する短い解説 (5 ページ)。
  • 火星については最近『火星ガイドブック』を読んだのでそこそこ分かる。

Part 2 岩石の基礎知識 ― 鉱物学と地球科学

第 5 章 鉱物学の基礎 ― 岩石は鉱物からできている

  • 固溶体と相図、酸素数によるケイ酸塩の固溶体の分類 (カンラン石・輝石・長石)、火成岩 (火山岩と深成岩)、など。
  • 酸素数が 4 つだとカンラン石、6 つだと輝石、8 つだと長石になる。カンラン石 (ペリドット) はマントルの主な構成岩石。

第 6 章 地球科学の基礎 ― 元素の特徴を用いた学問

  • 元素の性質による分類 (親鉄元素・親銅元素・親石元素・親気元素)、希土類元素、適合元素と不適合元素 (造岩鉱物に入りにくい元素)、年代測定法、など。
  • 後半の年代測定の話は今の自分にはだいぶ難しく全然理解できていない。

Part 3 宇宙をめぐる岩石たち ― 隕石と小惑星

第 7 章 隕石 ― 小惑星のかけら

  • 世界各地に飛来した隕石、南極に飛来した隕石、各惑星起源の隕石、などを紹介した章。
  • 惑星や小惑星に探査機を飛ばして元素組成を調べることで今まで地球に落下してきた隕石の起源を特定することができ、サンプルリターンせずとも手元に既にある隕石から色々なことが分かるようになる。なるほどー、この視点はなかった。もちろんサンプルを直接持って帰ってくる方がもっと色々分かる。
  • 今年習志野市に落ちた隕石は「習志野隕石」と呼ばれてるけど、これも命名規約上は郵便局名から取られているのかな?

“隕石の命名は、最も大きな破片が落下した地点を受け持つ郵便局の名前がつけられることになっています” ― p.77

  • 日本は世界第二位の隕石保有国らしい。

“南極大陸の特定の場所(基本的には山脈のふもと)に隕石が集積するシステムが明らかになり、現在まで1万6700個(極地研より)の隕石を発見・回収した結果、日本は世界で二番目に多くの隕石を保有する国となった”

隕石#日本の保有する隕石 - Wikipedia

第 8 章 隕石の分類・隕石よもやま話

  • 隕石の大分類 (鉄隕石・石鉄隕石・石質隕石) と小分類 (エイコンドライト・コンドライトなど)、隕石の命名法、隕石の値段、など。

第 9 章 小惑星の分類 ― スペクトル分類法と固有軌道要素分類法

  • 小惑星と彗星の区別、小惑星の番号と命名法、小惑星の赤外線反射スペクトル、小惑星の分類 (アルベドやスペクトルによる分類・固有軌道要素による分類) など。
  • 小惑星のなんちゃら族は固有軌道要素 (軌道長半径・離心率・軌道傾斜角など) の類似性によって決まる。

第 10 章 小惑星の写真集 ― 探査機による観測と写真

  • 今までに近傍で撮影された小惑星の写真の紹介とそれらの大きさ比較。
  • ラブルパイル天体:破砕した岩石が集まってできた天体 (イトカワなど)。
  • YORP 効果:ひずんだ形状を持ち自転している天体 (小惑星など) が、太陽から受ける光の圧力と天体表面からの熱放射のバランスが場所によって異なるために自転速度が変化する効果。

第 11 章 宇宙望遠鏡 ― 地球外からの宇宙の観測

  • ハッブル宇宙望遠鏡、チャンドラ X 線観測衛星、すピッツァ宇宙望遠鏡、広域赤外線探査衛星 (WISE)、ひとみ X 線天文衛星の紹介。

Part 4 宇宙の岩石を取りに行く ― サンプルリターンの歴史と未来

第 12 章 月試料サンプルリターン ― 無人・友人月探査機とサンプルリターン

  • ルナ計画・サーベイヤー計画・アポロ計画の話と近年の月無人探査機の話。

第 13 章 彗星・太陽風サンプルリターン ― スターダスト計画とジェネシス計画

  • スターダスト計画は彗星のコマ物質と宇宙塵のサンプルリターン、ジェネシス計画は太陽風物質のサンプルリターンを行った。
  • はやぶさのサンプル採取のための弾丸発射が失敗したのにはこんな理由があったのか・・・

“弾丸発射失敗の原因がプログラムのミスだったことが正式に公表された。個々のプログラムにバグは無かったが、プログラムから別のプログラムにデータを受け渡す際の真偽の解釈が逆という、パラメータ設定の人為的なミスがあり、システム全体としては問題があった”

はやぶさ (探査機) - Wikipedia

第 14 章 S 型小惑星サンプルリターン ― はやぶさ

  • はやぶさの概要、探査機の搭載機器、試料回収の実際の流れ、イトカワの特徴と形成過程、など。

第 15 章 C 型小惑星サンプルリターン ― はやぶさ 2

  • はやぶさ 2 の概要、探査機の搭載機器、試料回収の実際の流れ、リュウグウの特徴と形成過程、など。

第 16 章 B 型小惑星サンプルリターン ― オシリス・レックス

  • 計画概要、探査機の搭載機器、小惑星ベンヌの特徴、科学的な成果 (YORP 効果の実証、地球への衝突確率) など。オシリス・レックスはプロジェクト名の頭文字を組み合わせた名前らしい。
  • オシリス・レックスの最初の試料回収はちょうどこの本を読み終わる頃に行われたようで、無事に回収できたみたい。その時の動画が公開されていて、着地とサンプルが舞い上がる様子が鮮明に映されている。
  • 小惑星ベンヌの様子はこの動画が分かりやすい。大きな岩石がゴロゴロしていることがよく分かる。

第 17 章 今後のサンプルリターン計画

  • NASA/ESA による火星サンプルリターン計画、JAXA による火星衛星サンプルリターン計画、NASA による M 型小惑星サイキの探査計画について。
  • サイキはニッケル鉄がむき出しの小惑星らしい。金属に穴を開けるのは難しいため、サンプルリターンではなく探査機による調査になるそう。

終章 生命の可能性のある惑星・衛星 ― 液体の水さえあれば

  • 太陽系において液体の水がある可能性がある火星・エウロパ・ガニメデ・エンケラドゥスの紹介。