『Learn or Die 死ぬ気で学べ ― プリファードネットワークスの挑戦』を読んだメモです。

本書では、これまでまとめて語られたことのなかったPFNの創業から現在に至る軌跡、企業文化、西川、岡野原、そしてPFNが目指す未来までを記しています。

書籍『Learn or Die 死ぬ気で学べ プリファードネットワークスの挑戦』を刊行

読んだ動機

PFN のことはその前身である PFI の頃から「ACM/ICPC 世界大会出場者がやっている技術力のすごい会社がある」という噂を聞いていました。インターンの同期が何人も PFI/PFN に就職しており、最近も周りで PFN に転職する人がいたりと、ずっと気になる会社の一つでした。そんな会社が本を出すということで出版されてすぐに買いました。

読んだ感想

以降の引用は特に明記がない限り本書からのものです。

技術への熱量

コンピュータの性能を上げることは正義だ。上げていった先に、質的な変化が訪れる。

読んで真っ先に感じたのが著者お二人の圧倒的な熱量でした。大規模なコンピューティングパワーが技術発展の鍵であり、それを自社で開発・運用・活用して研究開発力を突き詰めることが差別化に繋がるという強い信念が伝わってきました。

マグロと同じように、エンジニアも新技術を常に取り入れ続けなければ死んでしまう。だからエンジニアはマグロのようなものなのだ。常に学び続けなければならない。

会社の「バリュー」の一つで本書のタイトルにもなっている「Learn or Die (死ぬ気で学べ)」についてはこのように説明されており、会社全体が技術に対する強い enthusiasm を帯びていることがよく分かりました。

PFN 創業の経緯

自分が「面白い」と思えることに、もっと敏感になるべきだと考えた。人生は有限だ。「面白い」と思えることにフォーカスしないと、最大の成果は出せない。

私は「それもわかるが、つまらないから嫌だ」と言った。「面白いことをやらないなら生きている意味がない」とまで言って、無理やり説得した。

代表取締役社長の西川さんが 30 歳を過ぎて考え方がガラッと変わり、今までの蓄積を捨てる覚悟を決めて面白いと思えることにピボットした結果 PFN が誕生したというくだりは、私自身 30 歳を過ぎて規模は違えど色々考えることがあったのでとても共感しました。

個人的に気になっていたのが PFI から PFN とレトリバに分かれた経緯だったんですが、それも詳しく述べられています。外野的には PFI から PFN へは機械学習を軸にシームレスに繋がっていたのだと思っていましたが、上述のように中の人たちは深層学習そして IoT やロボットへの大きな転換という覚悟を持ってビジネス的にも新しくスタートしたというのは意外でした。

会社のカルチャー

会社のカルチャーは技術ドリブンで自由な風潮で失敗することが推奨されている環境のようです。一方で人数の増加にあわせて今までのフラットな組織から階層的な構造への移行を検討しているという辺りは、似たような経験があるので妙に実感を持ちながら読みました。人事評価も 360 度評価をしているみたいですね。

その他

トレンドを見ながらアーキテクチャを作っていかないと終わってしまう。そして、ワークロードが変わるところに新しいチャンスがある。その変化を見続けられる環境を作りたい。

これは強く実感している部分で、ビジネス的にも技術的にもワークロードの変化の波にうまく乗っかれると面白いことができるんじゃないかなと思っています。私も深層学習によるワークロードにコンピュータシステムの観点から興味があるんですが、あまり手を付けられていないのでした。「死ぬ気で学べ」の気持ちで頑張ろう・・・。

機械学習の理論やアプリケーションへの応用方法にも興味はあるが、それ以上に機械学習を支えるフレームワークや計算環境に強い興味がある。ニューラルネットによるワークロードにはどのような特徴があり、どのようなシステムが求められているのか、それを理解できるだけの理論的知識が身に着けられたら嬉しい。前述の通り元々並列分散システムに関心があり、最近はハードウェアにも興味があることから、昨今の「自社システム用に機械学習基盤を作るぞ!」という流れはとても楽しく眺めている。それにあれこれ感想を言えるようになりたい。

2019 年は統計学と機械学習を頑張る - nhiroki’s weblog

その他にも、PFN が IoT やロボットといった各分野のどの部分に特に注目しているか詳しく紹介されていて面白かったです。