「課題解決を人に任せるが、課題理解を人任せにはしない」というのを今年のスローガンにしていきたい。実行権限は委譲するが、理解することを丸投げしない。

多摩川

たくさんの課題に取り組んでいると、そのすべてを完璧に処理するのが難しくなり、自分で対処しきれない課題を他の人にお願いすることになる。組織の練度が上がるにつれ、お願いする課題の抽象度も上がり、ついには自分でも詳しく把握できていない課題をそのまま他の人にお願いすることになる。これは組織的としては正しい進化かもしれないが、個人の成長としてはあまり健全ではないと思っている。細部の理解が曖昧になると、適切なディレクションができなくなるし、壁打ち相手としても頼りなくなる。実際昨年はそれが原因でテックリードとして有意義な議論ができないこともあった。

そんな思いを抱えながら、年末にいろいろな方の振り返り記事を読みまわっていたところ、@lmt_swallow さんの『理解から逃げない』という素晴らしい文章に出会った。@lmt_swallow さんは現在 Flatt Security 社の取締役 CTO であり、自分とは違った視座にいらっしゃるが、根底にある問題は同じではないかと思っている。

(4) 理解から逃げない

分割統治法に似た発想で、問題を細分化して考えることで、課題を分散して解けるようにするアプローチは組織づくり・ソフトウェアづくり・その他多くの場面で当たり前のように行われる。しかし、その問題の細分化方法が最適かを検討する際は、結局全てを理解する覚悟を保つ必要がある。抜本的な改革ほどこの覚悟を要する。

難しそうなことから逃げ始める(自分以外の専門家が取り組んでいることを、自分は分からなくていいやと放っておきはじめる)と、急に自分の能力向上のペースや、他者理解のペースは落ちる。物事を理解することはたいてい常に正義だ。理解から逃げない ― これは自分が今年意識していたことの一つだった。

もちろん全てを理解することは不可能だし、自身の理解度に関わらず適切に課題を委譲して組織として戦っていくのが大事だが、いずれにせよ理解することを諦めないように心がけていきたい。