『通信地政学 2030 ― Google・Amazon がインフラをのみ込む日』を読んだ。

表紙

通信インフラのソフトウェア化(クラウド化)や独自の海底ケーブルの敷設によって、巨大 IT 企業による通信業界への進出が増えている。また企業間の競争を超えて、EU のような経済圏内での規制、通信プロトコル策定における陣営間の対立、半導体の輸出入制限による国家間の対立など、通信は伝送路・通信プロトコル・アプリケーションといった様々なレイヤーで競争や分断が進んでいる。このような複雑な世界情勢において、各国・各経済圏における動きや NTT といった日本企業の戦略について、本書は大局的に紹介している。

個人的には海底ケーブルの歴史、携帯電話網のクラウド化、NTT による IOWN 構想、通信プロトコルの標準化の裏にある各陣営の思惑の話が面白かった。IOWN 構想では通信に限らずコンピューティングにも光技術を応用していくらしい。実現可能性は分からないけど技術的にとても興味深いし少し勉強してみたい。

もしかしたら読み落としているだけかもしれないけど、Starlink による衛星コンステレーションについての記述がなかった気がする。今時の戦争においてその有用性が示されたこともあり、今後各国の通信インフラのポートフォリオの中で衛星コンステレーションがどういった位置付けになっていくのかは気になる。