『イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」』を読んだ。

表紙

「バリューのある仕事」は「解の質」と「イシュー度(課題の質)」の二軸によって決まる。多くの人はやみくもに大量の仕事をこなして解の質を上げてバリューを出そうとするがこれは誤ったアプローチであり、正しくはイシュー度の高い課題を見つけ出してからその解の質を上げることが重要だと筆者は述べている。そしてこの一連の流れは一度やれば終わりではなく、素早く何度も繰り返すことが、最終的なアウトプットの質を高めることに繋がる。

本書ではイシューを見極めることの重要性とそのやり方、それに対する仮説の構築と検証、他者に価値あるイシューであることを理解してもらうための言語化とストーリーラインの構築などについて紹介している。

筆者はコンサルタント出身であり、話のベースは「コンサル業務におけるアウトプットの向上」にあるが、もちろんコンサル業務に限らず汎用的に使える考え方である。これを自分の仕事(ソフトウェアエンジニア)で考えてみると、例えばイシューとはプロダクトの KPI を改善することであり、それを実現しうる仮説に対して MVP を決め、開発・検証のイテレーションを高速に回してフィードバックを得ることが、「イシュー度」と「解の質」に対するイテレーションに相当するだろう。

またソフトウェア開発においても言語化やストーリーラインの構築は重要になる。経験上、ここがしっかりしていないと「何となく重要そうな課題だからやる」のような、行き当たりばったりの開発スタイルになってしまう。イシュー解決に向けてチームが描くストーリーラインと、そのストーリーラインに対する自身のタスクの位置付けについて、各メンバーが明瞭に語れる状態を常に維持する必要がある。これが仕事への納得感を生み出したり、解決すべきイシューを見失わないための羅針盤となる。この状態を作るには、リーダーがストーリーを明快に言語化し、メンバーにそれを常に意識してもらう努力をする必要がある。またこのストーリーは開発チームのみならず、上司や顧客にプロジェクトの重要性を理解してもらうのにも役立つ。個人的にはストーリーラインの構築と伝達には OKR が有用だと思っている。OKR はまさにストーリーラインを言語化するものであり、その策定プロセスや振り返りを通してチームの目指す先と各タスクの位置付けをメンバーに浸透させることができるだろう。

本書の主題から逸れてしまった。いずれにせよ、イシューの見極めと言語化は価値ある仕事をするうえで重要であり、本書の話はコンサルにとどまらず知的生産性を問われる幅広い仕事に有用だろう。

あとなるほどと思ったのは「悩む」ことと「考える」ことの違い。考えているつもりが実は無為に悩んでいるだけだったというのはよくあるので、自分が今悩んでいるのか考えているのか常に意識し、無駄な時間を減らすよう努めたい。