『コーチングよりも大切なカウンセリングの技術』を読みました。

表紙

本書は「職場におけるカウンセリング型のコミュニケーション」について、マンガによるエピソードを元に丁寧に解説しています。「カウンセリング型」という言葉が示唆するように、本書で扱うカウンセリングはうつ病治療のような専門的なカウンセリングではなく、あくまでも職場や家庭におけるちょっとした悩みに対する気づきを手助けするためのものです。しかし、だからといって紹介されている手法が小手先のものということはなく、様々な心理学者が研究・構築してきた心理療法や技法に基づいたものとなっています。

カウンセリングと関連した手法にコーチングとティーチングがありますが、本書ではそれらを使った場合のストーリー展開についてもマンガで解説しています。同じ状況において異なる手法を使った場合にどういう結果を迎えるのか、マンガを通して対比させることでその違いがより鮮明に描き出されています。今までこれら手法の違いについて深く考えたことはありませんでしたが、本書を読むことでかなり整理することができました。子育てのような日常生活においても間違いなく有用なテクニックなので、日頃から自然とモード切り替えしながらコミュニケーションを取れるようにしていきたいです。

本書後半では企業における事業戦略と組織のモチベーションについて、MUST / WANT / CAN の重なりから考える理論について紹介しています。従来は MUST(事業戦略)を明確にして社員の WANT や CAN を整合させていくのが一般的でしたが、不確実性の大きな現代では MUST は必ずしも明確にできるものではなく、逆に組織の持つ WANT や CAN から適応させていくものではないか、そしてその中でカウンセリング型のコミュニケーションが大きな力を発揮していくのではないかと筆者は述べています。この他にもカウンセリングという個人間のコミュニケーションテクニックを組織レベルへとスケールさせていく考え方は勉強になりました。