以前、情報系の学科で学ぶ大学生から「大学の授業は大切ですか?」という質問を受けました。もしかしたら同様のことで悩まれている方がいるかもしれないので私なりの回答をここに記しておきます。予め強調しておきたいこととして、これは私見に過ぎず、私が経験したことや見聞きした事柄に強く依存しています。色々な人に同様の質問をしてより客観的な判断をしていただければと思います。

元の質問者の方は少し込み入った状況にあってこの質問をしてくれたんですが、記事にまとめるにあたってそのあたりを端折って一般化しています。

私の回答

学士としての専門性を獲得する上で大学の授業は重要ですし、そこに異論はないでしょう。それを前提として、私はさらに (1) 単位の取得(2) 共通言語の獲得、という二つの点から大学の授業は大切だと考えています。

(1) について、単位の取得や良い成績を収めることは、海外留学や就職といった成績表を提出する場面で影響を与える可能性があります。といっても、細かい履修内容や成績まで見られる機会はだいぶ限られると思いますが、成績は後から改善することができないのでもしそれが影響しうる進路を選ぶのであればキッチリこなしておいた方が良いです。成績が海外留学に与える影響については k0kubun さんの「リモートでアメリカの大学院に通い始めた」という記事を読むと雰囲気が分かります。また奨学金の要件として一定以上の成績を要求している場合もあります。今現在奨学金の給付を受けていなくても、将来それが必要になることもあるかもしれません。

(2) について、履修しなくても良いのでその学科向けに開講されている全科目の教科書や参考書1をざっと流し読みして基本的な用語や概念を頭に叩き込んでおくことをオススメします。これは自分が将来専門とする科目かどうかに関わらずです。学部で学ぶ内容はどれも一般教養みたいなもので、技術力の高い環境(研究室や職場)であればあるほど学部レベルのことは専門外であってもある程度みんな知っている前提で話が進みます。あとから必要に応じて学び直すことはできますが、比較的時間のある学生のうちにささっとやっておくと楽です。また、院試は学生の履修状況に関わらず様々な分野から出題されます。大学院への進学を検討しているのであれば、なおさら一通りの科目を学んでおく方が良いと思います。学部や院試における私の経験は「新卒のソフトウェアエンジニアになるまで」という記事に書いたので参考になれば幸いです。

何を大切と考えるか?

「大切かどうか」は何に価値を見出しているかによって大きく変わってくるでしょう。私は「授業で良い評価を収める」「授業内容を理解する」ことで得られる可能性に着目して回答しました。人によっては「同級生からの刺激」とか「分野をリードする先生との繋がり」とか、まったく違うことを重視するでしょう。はじめにも述べたとおり、色々な人に同様の質問をして自分なりの価値観を見出してもらえればと思います。

大学に進学する理由は大卒という経歴のためかもしれません。また将来選択した学科とは全く無関係の職に就くかもしれません。いずれにせよ、卒業を目指すのであれば最低限の単位を取得する必要があり、どうせなら自分の可能性を最大限に広げられるようにカリキュラムを活用できると良いですね。

余談

COVID-19 による授業のオンライン化もあって、今の学生さんは先輩たちからこういった情報を得る機会が少ないのかもしれないなぁ、とちょっと懸念しています。

注釈

  1. 教科書や参考書は買わずとも図書館で借りられると思います。なければ注文依頼を出しましょう。