天文の世界史』の読書メモです。

読んだ動機

10 月に受ける天文宇宙検定に向けて、苦手であまり興味がなかった天文学史をどうにかしようと思って読み始めた。面白いエピソードと絡めて学べば興味を持てるんじゃないか、という狙い。

感想

  • とても面白かった。当初の狙い通り天文学の歴史に興味を持つことができたし、天文宇宙検定に向けて学んできた細切れの知識が脳内でだんだんネットワーク化されていく様を感じられた。
  • 著者は天文学史の研究をされている方で、数多くの文献に基づいて書かれていることが十二分に伝わってきた。一つ一つのトピックがとても興味深い。ストーリー展開がよく練られていて、前半に張られた伏線が後半で回収される様は読み物としても上質。

読書メモ

  • 第 1 章「太陽、月、地球 ― 神話と現実が交差する世界」
    • 内容が濃すぎてとてもじゃないけどまとめきれないので特に面白かった話を挙げると、スーパームーンとブルームーン、改暦と政治の話 (特に明治改暦)、「カレンダー」という言葉の由来、国旗に見られる細い月の意味、地球の大きさの測定の歴史、辺りの話が面白かった。
    • 最後の月探査で今までの伏線を一気に回収していてすごい。
  • 第 2 章「惑星 ― 転回する太陽系の姿」
    • 太陽系の各惑星の観測の歴史・神話との関係・逸話などの紹介。
    • 十干十二支とそれに由来する物事 (甲子園球場の名称や還暦の意味など)、惑星の動きを解析する試み、曜日名とその順序の由来、惑星の定義、など本章も興味深い話が多かった。
  • 第 3 章「星座と恒星 ― 星を見上げて想うこと」
    • 星や星座がどのように生活に定着し使われてきたのか紹介。
    • 時刻と星の関係、地域ごとの星座の伝来と発展の違い、十二星座と十二宮、星の名前の由来と正式名の制定、星のスペクトル分析、系外惑星、など。
    • 星というと方角を知るツールのイメージが強いけど、時刻を知るツールとしても使われていたって話が印象に残った。あと十二星座と十二宮の乖離、北極星の変化の話に興味を惹かれた。
  • 第 4 章「流星、彗星、そして超新星 ― イレギュラーな天体たち」
    • 突如現れる彗星や流星などを昔の人がどう感じていたか、そしてそれらの仕組みをどのように解明していったかの話。
    • 肉眼による超新星観測の限界、星雲と星団、彗星と小惑星の違い、流星群や超新星爆発の仕組み、Ia 型超新星爆発による距離の測定、など。
    • 天動説との兼ね合いからイレギュラー天体を気象現象として解釈しようとした話や、ティコの折衷的太陽系モデルの話が面白い。彗星と流星群の関係知らなかった。
  • 第 5 章「天の川、星雲星団、銀河 ― 宇宙の地図を描く」
    • 各地の天の川伝説と七夕、雲状天体の観測、星団と星雲、オルバースのパラドックス、メシエカタログと NGC、星雲の形成過程、ケフェイド変光星による距離測定、銀河の大きさと形状、ダークマター、重力レンズ、宇宙の大規模構造、など。
  • 第 6 章「時空を超える宇宙観」
    • 宇宙の語源、地域・文化ごとの宇宙観と研究対象の違い、渦動説とエーテル、地球年齢の実験による推定、一般相対性理論、宇宙膨張とダークエネルギー、ビッグバン、宇宙年齢と宇宙背景輻射、など。
    • 宗教観との齟齬を「解釈」で乗り越えたという話が興味深い。
  • 終章「「天文学」と「歴史」」
    • 天文学は歴史的な記録を積み重ねた上に成り立っていて、その記録に結びついた文化や宇宙観を理解し公平に捉えることが発展していく上で重要という話。
    • 「象・亀・蛇によって世界は支えられている」という古代の宇宙観は実は存在せず、様々な宇宙観が伝聞で混じった末に後世生まれたものという説にちょっとびっくりした。