エンジニアリング組織論への招待 ― 不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング』の読書メモです。

読書メモ

  • 第 1 章「思考のリファクタリング」
    • エンジニアリングは「何か」を実現するための学問分野。実現には曖昧なことを明確にしていく必要があり、それに起因する不確実性をどのように減らすかが重要。本章では不確実性を生み出す要因、それを具体的で行動可能なものにする思考パターンなどを紹介。
    • エンジニアリングの本質は不確実性の削減にある、という話が目から鱗だった。日々やることを明確にするためにタスクリストを作ったりするけど、それは必要なものを単に列挙しただけってことが多かった。「不確実性を減らす」というメタな視点から考えるとより洗練されたタスクに落とし込めそう。
  • 第 2 章「メンタリングの技術」
    • メンタリングとは、メンター・メンティの関係性、問題の可視化や明晰化、メンタリングに関係する様々な認知モデルやフレームワークの紹介、などなど。
  • 第 3 章「アジャイルなチームの原理」
    • アジャイル開発の概説、現状、歴史、そして誤解など。アジャイルは手法ではなく目指すべき理想状態。アジャイル開発とは軽量な開発手法の総称や共通点などから導かれたムーブメントであって、従来手法と二項対立するものではないという話。
    • プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントの違いの説明が分かりやすかった。あと 3-4 節のアジャイルに関連した言葉が整理されている表も良かった。「創発」が自然科学に由来する用語だとは知らなかった。もっとキラキラした意味だとばかり思ってました。
  • 第 4 章「学習するチームと不確実性マネジメント」
    • 方法不確実性・目的不確実性・通信不確実性の発生・複雑化要因とそれを手懐ける理論やフレームワーク、見積もりの手法、スケジュール不安とマーケット不安のマネジメント、など。
    • 前にも書いたけど、不確実性を減らすっていう視点が重要だったんだな。それを先に理解してたら、ソフトウェア開発手法について納得感を得ながら学べた気がする。今から学べば良いんだけど。
  • 第 5 章「技術組織の力学とアーキテクチャ」
    • 生産性の定義と情報処理システムとしての組織、権限委譲と説明責任、情報非対称性、技術的負債とそれを管理するための可視化、組織と取引コスト、機能横断チーム、目標管理と透明性、OKR、組織設計とアーキテクチャ、などなど。
    • 組織をメタに見る話が学びが多かった。技術的負債という言葉がエンジニアと非エンジニアのコミュニケーションのためのアナロジーであるという話と、採算性を可視化するために事業部門を独立させることが取引コストの増大に繋がる、という話が特に面白かった。

感想

組織をリファクタリングするための思考やモデルが個人レベルから会社レベルに至るまで詳しく解説されてておすすめ。ただ情報量が多くて読むのが大変だった。