今回は Service Worker の中で最も重要なオブジェクトであろう ServiceWorkerRegistration について詳しく紹介します。なお、この記事は 2015/07/05 時点での仕様に基づいており、Chrome 45 で動作確認を行っています。

ServiceWorkerRegistration はその名の通り Service Worker の登録情報を表しています。スコープによって一意に特定することができ、そのスコープに関連した ServiceWorker オブジェクトのセットを持っています。この辺りのことはコンセプトとして仕様に明記されています。

ServiceWorkerRegistration オブジェクトの IDL は次のように定義されています。

[Exposed=(Window,Worker)]
interface ServiceWorkerRegistration : EventTarget {
  [Unforgeable, SameObject] readonly attribute ServiceWorker? installing;
  [Unforgeable, SameObject] readonly attribute ServiceWorker? waiting;
  [Unforgeable, SameObject] readonly attribute ServiceWorker? active;

  readonly attribute USVString scope;

  void update();
  [NewObject] Promise<boolean> unregister();

  attribute EventHandler onupdatefound;
};

ServiceWorker オブジェクトについても言及するので、そちらの IDL も引用しておきます。

[Exposed=(Window,Worker)]
interface ServiceWorker : EventTarget {
  readonly attribute USVString scriptURL;
  readonly attribute ServiceWorkerState state;
  readonly attribute DOMString id;
  void postMessage(any message, optional sequence<Transferable> transfer);

  attribute EventHandler onstatechange;
};
ServiceWorker implements AbstractWorker;

enum ServiceWorkerState {
  "installing",
  "installed",
  "activating",
  "activated",
  "redundant"
};

本記事では、一般的な意味での Service Worker を SW、ServiceWorkerRegistration インタフェースを Registration と表記し、ServiceWorker インタフェースについては省略せずに表記します。

Registration の登録・取得・更新・抹消

Registration の登録には register() を使用します。次の例では “https://example.com/foo/bar” をキーとした Registration を登録します。

// On https://example.com/index.html
navigator.serviceWorker.register('/sw.js', {scope: '/foo/bar'})
  .then(function(registration) { ... });

登録済みの Registration は getRegistration() もしくは getRegistrations() で取得することができます。getRegistrations() は Chrome ではバージョン 45 から使用することができます (crbug)。

// 現在のページをスコープに含む Registration を返す
navigator.getRegistration().then(function(registration) { ... });
// 'https://example.com/hoge/fuga' をスコープに含む Registration を返す
navigator.getRegistration('/hoge/fuga/').then(function(registration) { ... });
// このオリジンに属する全ての Registration を返す
navigator.getRegistrations().then(function(registrations) { ... });

.ready は現在のページをスコープに含む Registration の .active がセットされた時に resolve される promise です (別記事参照)。

navigator.serviceWorker.ready.then(function(registration) {
    console.assert(registration.active);
  });

SW の実行コンテキスト上では自身が所属している Registration を self.registration で取得することができます。

// On https://example.com/sw.js
var registration = self.registration;

Registration に紐付いた SW を更新するには update() を使います (別記事参照)。

registration.update();

Registration の抹消には unregister() を使います。

// 成功すると true を返す。既に抹消済みの場合は false を返す
registration.unregister().then(function(result) { ... });

Registration と ServiceWorker の状態遷移

Registration には installing, waiting, active の三つの ServiceWorker オブジェクトが関連付けられています。

interface ServiceWorkerRegistration : EventTarget {
  [Unforgeable, SameObject] readonly attribute ServiceWorker? installing;
  [Unforgeable, SameObject] readonly attribute ServiceWorker? waiting;
  [Unforgeable, SameObject] readonly attribute ServiceWorker? active;
  // 以下省略
};

次の図は ServiceWorker オブジェクトの状態 (ServiceWorker.state) の遷移と Registration のフィールドの対応関係を表しています。

ServiceWorkerRegistration

.installing は register() もしくは update() から install イベント完了までの installing 状態の ServiceWorker オブジェクトです。新しい SW が .installing にセットされると Registration の updatefound イベントが発火します (別記事参照)。これを使うと、新しい SW が検出されたらとりあえず postMessage を送る、といったことができます。

registration.addEventListener('updatefound', function(e) {
    e.currentTarget.installing.postMessage('Hello, new installing worker!');
  });

.waiting は install イベント完了から activate イベント開始までの installed 状態の ServiceWorker オブジェクトです。三つのフィールドの中で .waiting が一番分かりにくいかもしれません。register() や update() などによって新しい SW がインストールされたとしても、その時点でページをコントロールしている SW がいる場合はすぐに入れ替えることができません。というのも、ページコントロール中に SW が入れ替わってしまうとアプリケーションの処理に不整合が生じる可能性があるからです。そこで、現在アクティブな SW がコントロールしているページがすべて閉じられて安全に SW を入れ替えできるようになるまでは、新しくインストールされた SW は installed 状態で待機することになります。これが waiting と呼ばれる理由です。

ちなみにコントロールされているページの有無に関わらず、一気に .active (activated 状態) に遷移させる方法として skipWaiting() があります。これを使うと、例えば「バグのある SW スクリプトを配信してしまったのですぐに SW を更新したいけど、ユーザがタブを開きっぱなしにしているせいで SW がいつまでも入れ替わらない」といった事態を避けることができます。

// On https://example.com/sw.js
self.addEventListener('install', function(event) {
    // install イベント終了後、コントロールされているページの有無に関わらず、
    // すぐに activate イベントが発火する
    event.waitUntil(skipWaiting());
  });

.active は activate イベント開始以降の activating もしくは activated 状態の ServiceWorker オブジェクトです。この状態になるとページをコントロールすることができます。ちなみに activating 状態の SW は activate イベントが reject されたとしても activated 状態に遷移し、コントローラーになるので注意が必要です (Spec Issue)。

// On https://example.com/sw.js
self.addEventListener('activate', function(event) {
    // SW は activated 状態になる
    event.waitUntil(Promise.resolve());
  });

self.addEventListener('activate', function(event) {
    // reject されても SW は activated 状態になる (resolve の場合と等価)
    event.waitUntil(Promise.reject());
  });

Registration の状態確認

Registration の状態は Chrome の場合は DevTools 上で確認することができます。ただし、この機能は本記事公開の時点では experimental な扱いのため、デフォルトでは使用することができません。利用方法については次のスライドを参考にしてください。

Debugging ServiceWorker (horo@) - Google スライド

まとめ

今回は ServiceWorkerRegistration の概要とそれに関係した API、そして ServiceWorker オブジェクトの状態遷移との対応関係について説明しました。navigator.serviceWorker.register() や getRegistration() が SW のエントリーポイントになるのに対し、Registration は SW の状態を表す中心的なオブジェクトになります。これらを抑えておくことで、SW のモデルをより深く理解できるようになるはずです。